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⑫雪冤

「雪冤」

 

死刑を宣告された殺人犯、しかし彼は冤罪であると主張を繰り返します。
我が子の冤罪を晴らすために奔走する元弁護士の父親と担当弁護士
一刻も早く死刑の執行を希望する被害者遺族
冤罪証明が先か、死刑執行が先か、彼は本当に冤罪なのか?

物語は予想外の結末に向かっていきます、特にラストのどんでん返しは1級品
真犯人を何度も予想するが度々外れる推理、メロスは誰か?ディオニスは誰か?
「事件の真相を当てられるものなら当ててみろ!」と言わんばかりの結末には脱帽です。
物語の完成度はさることながら、「死刑」「冤罪」について考えさせられる1冊です

あらすじ
15年前、男子学生と19歳の女性が殺害され、一人の男が逮捕された。
被害者の名前は「長尾靖之」「沢井恵美」
犯人の名前は「八木沼慎一」
慎一の父親で元弁護士の「八木沼悦史」
慎一の冤罪証明のために雇われた弁護士「石和洋次」
沢井恵美の妹「沢井菜摘」
冤罪を晴らそうとする人・死刑を希望する人それぞれの苦悩と戦いの物語です。

物語は15年前の事件当日から始まります。
当時まだ学生だった慎一はホームレス支援のために
青空合唱団を結成して鴨川河川敷にて合唱を行っていました。
その日も活動日で慎一が指揮をとり「Soon Ah Will be done」という黒人霊歌を熱唱し観客を沸かせていました。
そんな何気ない日に発生する誰も予想していなかった残酷な殺人事件。

それから15年がたち、慎一の冤罪を晴らすために日課となった自作のビラ配りを悦史は繰り返していました。
悦史の唯一の味方は過去に慎一と関わりがあった弁護士の石和のみ。
悦史が面会を希望するも慎一が面会許可を出すのは石和にだけ。
石和が面会をした際に慎一から手記を発表したいと手渡された茶封筒
中にはこれまで慎一が繰り返し訴えた自身の無罪を表明と、慎一の死刑制度に対する考えが綴られていました。
悦史は何か解決の手掛かりになればと手記の発表を決心するのでした。
そしてこの手記の発表をきっかけに急展開を迎えるのでした……。

物語は誰も予想していない結末を迎えます!
読みながらこいつが真犯人か!と何度も予想しましたが全て外れました(笑)
最後の予想は結構自身がありましたがそれでもだめでした(笑)

死刑と冤罪という重たい題材を扱っていますが気にならないくらい話に吸い込まれていきます。
特に印象的だったセリフ
「被害者にとって加害者は、道端に落ちた一切れの泥まみれのパンのようなものです」
これは被害者遺族である菜摘に対して牧師が送った言葉です。

普通人は泥まみれのパンなど食べようとも思わない、でもそれが飢餓の状態ならどうでしょう?それしかないなら食べるしかないですよね?
大切な人を失った時人はそういう状況下に置かれます。もし病死なら泥まみれのパンすらない。でも犯罪なら怒り・苦しみをぶつけられる相手がいてしまう。それが泥まみれのパンになってしまう。

この「泥まみれのパン」という表現は何度か登場し、意外にも事件解決の手掛かりにもなります。

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